今週の薬機法・景表法に関する重要なニュースをお届けします。
📑 今週のアップデート内容
- [措置命令] 株式会社NOVAランゲージカンパニーに対する景品表示法に基づく措置命令(10月17日)
- [法改正] 2025年薬機法改正 – 11月20日施行まで残り17日
- [制度情報] 確約手続制度の本格運用が継続中
その他の更新(1件)
- [業界動向] 二重価格表示違反の取り締まり強化
📌 今週のハイライト
1. ⚖️ [措置命令] 株式会社NOVAランゲージカンパニー – 入会金キャンペーンの二重価格表示で措置命令
消費者庁は2025年10月17日、株式会社NOVAランゲージカンパニーに対し、同社が運営する「NOVA」と称する英会話教室において供給するコースに係る表示について、景品表示法に違反する行為(同法第5条第2号(有利誤認)に該当)が認められたことから、同法第7条第1項の規定に基づき、措置命令を行いました。
違反内容の詳細:
NOVAは自社Webサイトで、入会金2万2000円(税込み)が0円になるキャンペーンを告知していましたが、実態として値引き価格が常態化していたとして、消費者庁が景品表示法の有利誤認で措置命令を出しました。 CAA
本件はいわゆる二重価格の表示を巡る問題です。「通常価格より◯%割引」といった期間限定キャンペーンを打ち出す場合、目安として過去8週間のうち4週間以上、通常価格で販売していた実績が求められます。 CAA
具体的な問題点:
NOVAは以下のようなキャンペーン表示を繰り返していました:
- 「入会金22,000円→今だけ0円!」
- 「入会金22,000円→期間限定で半額11,000円!」
しかし実際には、これらのキャンペーンを毎月のように繰り返し実施しており、通常価格22,000円で入会した実績がほとんどありませんでした。そのため、消費者庁は「通常価格」が実態として存在しないと判断しました。
措置命令の内容:
- 違反表示の中止
- 消費者への誤認排除のための周知徹底
- 再発防止策の策定・実施
- 従業員への教育
NOVAからのコメント: NOVAは全国約300の教室を展開する業界大手の一角。措置命令を受けて同社は、おわび文面を自社Webサイトで公開しました。「弊社グループでは、本件を真摯に受け止め、関係法令を順守のうえ、速やかに対応を進めております。お客様および関係各位にご心配をおかけしておりますことをおわび申し上げるとともに、今後同様の事案が生じぬよう、再発防止に全力で取り組んでまいります」 CAA
公表資料: 📄 詳細ページ 📑 PDF報道発表資料(3.1MB)
事業者への教訓: 大手企業であっても、キャンペーン表示の実態が伴っていない場合、景品表示法違反となります。特に「期間限定」「今だけ」などの限定表現を使用する場合、通常価格での販売実績が必須です。
2. ⚖️ [法改正] 2025年薬機法改正 – 11月20日施行まで残り17日
施行日: 2025年11月20日(水)
11月20日の施行まで残り17日となりました。各事業者は最終確認段階に入っています。
製造販売業者の緊急チェックリスト
✅ 医薬品品質保証責任者・安全管理責任者の配置完了
- 責任者の任命は完了していますか?
- 権限と職務内容は文書化されていますか?
- 組織図に明記し、従業員全員に周知されていますか?
- 役員レベルへの報告ラインは確立されていますか?
✅ 特定医薬品供給体制管理責任者の配置(該当企業のみ)
- 供給計画は策定されていますか?
- 6か月以内の供給停止・制限の届出体制は整備されていますか?
- 製造業者・卸売販売業者との連絡体制は構築されていますか?
薬局の緊急チェックリスト
✅ 調剤業務委託の準備(委託を予定している場合)
- 委託先薬局との契約は締結済みですか?
- 委託可能な業務範囲(一包化作業等)を理解していますか?
- 同一三次医療圏内の委託先であることを確認していますか?
✅ 処方箋・調剤録の保存期間延長への対応
- 保存期間が3年から5年に延長されることを認識していますか?
- 保存スペースや電子データ保存体制は整備されていますか?
✅ 零売医薬品の規制強化への対応
- 処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売が原則禁止されることを理解していますか?
3. 📋 [制度情報] 確約手続制度の本格運用が継続中
景品表示法の確約手続制度は、2024年10月1日の施行以来、複数の企業から確約計画の認定申請があり、本格的に運用されています。
確約手続のメリット: 違反被疑行為に対して自主的に是正措置計画を申請し、消費者庁から認定を受けることで、措置命令と課徴金納付命令を回避できます。
最近の認定事例(2025年8月〜9月):
- ビッグローブ株式会社(9月26日認定)
- 株式会社イングリウッド(9月19日認定)
- 冷凍宅配食の販売事業者2社(9月19日認定)
- 株式会社LAVA International(8月28日認定)
NOVAの事例から学ぶ: NOVAは措置命令を受けましたが、もし消費者庁からの調査段階で確約手続を活用していれば、措置命令と企業名公表を回避できた可能性があります。
確約手続を検討すべきタイミング:
- 消費者庁から「確約手続通知」を受けた時
- 社内調査で表示に問題が発覚した時
- 競合他社への措置命令を見て、自社も同様の表示をしていることに気づいた時
💡 今日の薬機法・景表法の学び – ワンポイント集
📌 学び1: 二重価格表示の正しい運用 – NOVAの事例から学ぶ
NOVAの違反事例の詳細:
NOVAは以下のようなキャンペーンを実施していました:
- 「入会金22,000円→今だけ0円!」
- 「入会金22,000円→期間限定で半額11,000円!」
しかし、これらのキャンペーンを毎月のように繰り返し実施しており、実際には通常価格22,000円で入会する人はほとんどいませんでした。
景品表示法の基準:
二重価格表示(「通常価格○円→特別価格△円」)を行う場合、消費者庁は以下の基準を設けています:
【原則】
過去8週間のうち、4週間以上は通常価格で販売していた実績が必要
```
**具体例で理解する**:
**❌ NG事例: NOVAのケース**
```
1月: 入会金0円キャンペーン
2月: 入会金0円キャンペーン
3月: 入会金半額キャンペーン
4月: 入会金0円キャンペーン
5月: 入会金0円キャンペーン
→ 通常価格22,000円での販売実績がない
→ 景品表示法違反
```
**✅ OK事例**:
```
1月: 通常価格22,000円で販売(4週間)
2月: 通常価格22,000円で販売(4週間)
3月: 入会金0円キャンペーン(2週間)
4月: 通常価格22,000円で販売(2週間)
→ 直近8週間のうち、6週間は通常価格で販売
→ 問題なし
```
**事業者が取るべき対策**:
1. **販売実績の記録管理**
- 毎週の販売価格と販売数量を記録
- 通常価格での販売実績を証明できる資料を保管
2. **キャンペーン計画の事前確認**
- キャンペーン実施前に、過去8週間の販売実績を確認
- 通常価格での販売期間が不足している場合は、キャンペーンを延期
3. **社内審査体制の構築**
- 広告掲載前に、法務部門または外部専門家によるチェックを実施
---
### 📌 学び2: 「期間限定」「今だけ」表現の正しい使い方
**よくあるNG事例**:
**❌ NG事例1: 毎月同じキャンペーン**
```
1月: 「1月限定! 入会金0円」
2月: 「2月限定! 入会金0円」
3月: 「3月限定! 入会金0円」
→ 実質的に「期間限定」ではない
→ 景品表示法違反
```
**❌ NG事例2: 期間終了後も継続**
```
広告: 「10月31日まで限定! 50%OFF」
実態: 11月も同じ価格で販売継続
→ 「期間限定」が虚偽
→ 景品表示法違反
```
**✅ 正しい対応**:
1. **期間を明確に限定し、遵守する**
- 「10月1日〜31日限定」と明記
- 11月1日からは必ず価格や条件を変更
2. **次回キャンペーンとの間隔を空ける**
- 前回キャンペーン終了後、最低でも4週間は通常価格で販売
- その後、新しいキャンペーンを実施
3. **「期間限定」の根拠を文書化**
- キャンペーン実施計画書を作成
- 期間終了後の価格設定を事前に決定
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### 📌 学び3: 大手企業も例外ではない - コンプライアンス体制の重要性
**NOVAの事例が示すこと**:
NOVAは全国約300教室を展開する業界大手です。それでも今回、措置命令を受けました。これは、企業規模に関わらず、表示の正確性が厳格に求められることを示しています。
**大手企業が陥りやすい落とし穴**:
1. **慣例化したキャンペーンへの無自覚**
- 「毎月やっているから問題ない」という誤った認識
- 実は景品表示法違反の状態が常態化
2. **部門間の連携不足**
- マーケティング部門が独自にキャンペーンを企画
- 法務部門のチェックを経ずに広告掲載
3. **過去の成功体験への固執**
- 「これまで問題なかったから大丈夫」という油断
- 法規制の運用が厳格化していることへの認識不足
**必要なコンプライアンス体制**:
```
【3段階チェック体制】
第1段階: マーケティング部門
- キャンペーン企画書の作成
- セルフチェックリストでの確認
第2段階: 法務・コンプライアンス部門
- 景品表示法の観点からチェック
- 過去の販売実績との照合
- 措置命令事例との比較
第3段階: 経営層
- 企業リスクの観点から最終承認
- 高額キャンペーンは必須
```
---
### 📌 学び4: 確約手続制度の戦略的活用 - 措置命令を回避する選択肢
**確約手続とは?**:
景品表示法違反の疑いがある場合、事業者が自主的に是正計画を作成・申請し、消費者庁から認定を受けることで、措置命令と課徴金納付命令を回避できる制度です(2024年10月1日施行)。
**NOVAが確約手続を利用していたら?**:
NOVAの事例において、もし消費者庁からの調査段階で確約手続を活用していれば、以下のような対応が可能でした:
**シナリオ1: 確約手続を活用した場合**
```
1. 消費者庁から「確約手続通知」を受ける
2. NOVAが確約計画を作成:
- 違反表示の即時中止
- 過去の入会者への説明・返金措置
- 社内広告審査体制の構築
- 従業員への教育実施
3. 消費者庁が確約計画を認定
4. 措置命令・課徴金を回避
5. 企業名は公表されるが「違反認定ではない」と付記
```
**シナリオ2: 措置命令を受けた場合(実際に起きたこと)**
```
1. 消費者庁の調査
2. 弁明の機会付与
3. 措置命令の発令
4. 企業名公表(「景品表示法違反」と明記)
5. 社会的信用の大幅な失墜
6. 課徴金納付命令のリスク(別途)
確約手続のメリット:
項目措置命令確約手続企業名公表あり(違反認定)あり(違反認定ではない)措置命令ありなし課徴金あり(別途)なし社会的影響大中
確約手続を検討すべきタイミング:
- 消費者庁から通知を受けた時
- 「確約手続通知」を受けたら、60日以内に申請を検討
- 社内調査で問題を発見した時
- 自主的に消費者庁に相談し、確約手続の可能性を打診
- 競合他社への措置命令を知った時
- 自社も同様の表示をしていないか緊急点検
- 問題があれば、措置命令を待たずに確約手続を検討
🔍 今週の総括
今週は英会話教室NOVAへの措置命令という重要な事例が公表されました。
今週の重要ポイント:
- 二重価格表示の厳格化: 大手企業NOVAへの措置命令は、「期間限定」キャンペーンの実態が伴っていない場合、厳格に取り締まられることを示しました
- 薬機法改正まで残り17日: 11月20日の施行に向けて、各事業者は最終確認を急ぐ必要があります
- 確約手続制度の重要性: NOVAの事例は、確約手続を活用していれば措置命令を回避できた可能性を示唆しています
事業者が今週取るべき行動:
- 自社のキャンペーン表示を緊急点検(特に「期間限定」「今だけ」表現)
- 過去8週間の販売実績を確認し、二重価格表示の妥当性を検証
- 薬機法改正への対応完了(11月20日施行)
- 広告審査体制の再構築
業界全体への警告: NOVAのような大手企業でも措置命令を受ける時代です。企業規模に関わらず、表示の正確性を最優先事項として位置付ける必要があります。
💡 次回更新: 11月10日(月)


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