いま無音の演劇を演じる劇団が人気を博していることをご存知ですか?
無音劇とは、声を出したり音を出さずに演じるパフォーマンスのこと。そこでは光や映像を駆使し、パントマイムやブレイクダンス、マジックやジャグリングといった迫力のあるパフォーマンスで感動出来るストーリーを描きながら、セリフ一切使わないという演出により、小さなお子さまから大人、そして国籍を問わずに外国の方でも、言葉や文化の壁を越えて楽しめる演劇です。
今から100年ほどさかのぼると、その頃の映画には、音や声は存在しませんでした。
当時の日本では、活動弁士と呼ばれるいわゆるナレーターのような人が、映画の進行に合わせてスクリーンの横から映像を解説するという独自の文化が発達しており、他国より長く無声映画が人気でした。
しかし、今では映画や演劇にセリフの声や音による効果は欠かせないものとなっていました。そのような中で、コロナ禍により、少しでも感染リスクの低い演劇の手法として、いま無音劇が再認識されているのです。
今後の演劇界のあり方と進むべき方向として、この無音劇について解説していきたいと思います。
無音劇とは?日本では京都の「ギア-GEAR-」が大成功!
無音で感動のストーリーを演じるというパフォーマンスは、「喜劇王」の名をもつイギリス出身の「チャールズ・チャップリン」が日本でも有名です。また日本の名作映画にも数多くの無音映画が存在します。世界では1927年以降から、日本では1930年代前半から発声映画が普及し始めました。
逆に、演劇や人形浄瑠璃などの舞台演劇では、昔から声だけでなく、三味線や鼓、太鼓や笛類を用いた発声演劇が主流でした。しかし、発声演劇には古典的な言葉の意味が理解しにくいという問題点があります。歌舞伎や狂言、人形浄瑠璃などの日本古来の演劇では、小さな子どもだけでなく大人であっても、物語を完全に理解することが難しいのです。
その点で無音劇では、声を使わずに身体全体でストーリーからセリフまでを「表現」することで、観客に心を伝えます。そのパフォーマンスは喜怒哀楽表現し、時には無音であることすらを観客に忘れさせます。
音やセリフが無い分、演者と観客の距離がなくなり、国籍や人種、言葉や文化の壁さえも乗り越えるて、演劇の世界観を等身大の自分に置き換えて観ることが出来るのです。
日本でも、京都でロングラン公演を行っている劇団の「ギア-GEAR-」が有名で、過去8年あまりでのべ24万人の観客を動員し、今も日本人だけでなく日本を訪れた外国人観光客にも感動を与え続けています。
無音劇の魅力とは?圧倒的なパフォーマンスが観客を虜にする!
無音劇を演じる俳優は、いわゆるドラマ俳優や映画俳優とは違い舞台をメインにダンスやパフォーマンスをする人達です。ダンサーやマジシャン、バレリーナなど多彩な面々が、舞台で最高のパフォーマンスを繰り広げます。
観客もセリフがないので演者の動きに集中することができ、言葉が分からない外国の方にも関係なく通じるストーリーが魅力です。
いまインバウンドによる訪日客が激減している中で、演劇場で活動する劇団の解散が相次いでいます。もともと劇団に参加する演者には俳優を生業にしている人が多くはないのですが、やはり演劇が出来ないことは大きなマイナス要素です。
だからこそ外国人観光客が戻ってからに備えて、無音で演じるパフォーマンスや演技力を磨くことが大切です。
無音劇の今後は?セリフなしで演じる劇団は本物の証!
今年のコロナ禍中では、声を出す漫才や演劇などの自粛が相次ぎました。日本だけでなく、世界中のエンターテイメントが沈没するとまでいわれています。
そのような中で再注目されているのが無音劇なのです。無音の映画や演劇の素晴らしいところは、観客の「想像力をかきたてる」ところです。
以前スティーヴン・スピルバーグ監督が「一度、映画の音を消して見てみなさい。台詞なしでも感動する映画は、いい映画だ」と言ったように、今の演劇の文化において、すべてを台詞で説明しようといている風潮があります。
無音映画の筆頭作品といわれる、チャールズ・チャップリン主演の「街の灯」のように世界中の老若男女問わずに感動を与えられる映画や演劇は、これからの社会に古い手法でありながら「新しい新風」を巻き起こす日が近い気がしてなりません。
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