今週の薬機法・景表法に関する重要なニュースをお届けします。
📑 今週のアップデート内容
今週(12月2日〜8日)は、消費者庁から新規の措置命令はありませんでした。
一方で、2025年2月26日に景品表示法の確約手続の第1号認定事例が公表されたことが、今後の実務に大きな影響を与える重要なニュースとして注目されます。
今週のフォーカス
- [制度解説] 確約手続第1号認定事例 – かたぎり塾のケース
- [実務解説] 確約手続の活用メリットと注意点
- [振り返り] 2025年の景品表示法違反措置命令総括
📌 今週のハイライト
1. 📋 [制度解説] 確約手続第1号認定事例 – かたぎり塾のケース
2024年10月1日に施行された確約手続制度において、2025年2月26日に初めての認定事例が公表されました。
事業者: パーソナルジムを運営する事業者(かたぎり塾)
違反被疑行為: パーソナルジムの入会金に関する表示について、景品表示法違反(有利誤認)の疑いがある行為
確約計画の内容:
- 違反被疑行為を再び行わない旨の取締役会決議
- 違反被疑行為の内容の一般消費者への周知徹底
- 再発防止策の策定・実施と従業員への周知徹底
- 違反被疑行為の期間に入会した顧客に対し、入会金の一部を返金すること
- 上記の履行状況を消費者庁に報告すること
確約手続のポイント:
上記(1)〜(3)、(5)は措置命令で命じられるのと同等の内容ですが、(4)の返金措置が措置命令では命じられない被害回復措置として注目されます。
確約認定の効果:
- 措置命令を受けない
- 課徴金納付命令を受けない
- 企業名は公表されるが「景品表示法違反を認定したものではない」と付記される
2. 💡 [実務解説] 確約手続の活用メリットと注意点
確約手続の全体の流れ:
① 消費者庁が違反被疑行為について調査開始
↓
② 消費者庁が「確約手続通知」を事業者に送付
↓
③ 事業者が確約計画(是正措置計画)を作成・申請(60日以内)
↓
④ 消費者庁が確約計画を審査
↓
⑤ 認定要件に適合すれば、消費者庁が確約計画を認定
↓
⑥ 認定された確約計画を公表
↓
⑦ 事業者が確約計画を履行
↓
⑧ 措置命令・課徴金納付命令を受けない
確約手続のメリット:
項目措置命令確約手続企業名公表あり(違反認定)あり(違反認定ではないと付記)措置命令ありなし課徴金あり(別途)なしレピュテーション大幅に低下比較的軽微被害回復命じられない自主的に実施
確約手続の対象外となるケース:
- 過去10年以内に措置命令・課徴金納付命令を受けた事業者(繰り返し違反)
- 悪質・重大な違反被疑行為の場合(表示に根拠がないことを認識しながら、あえて表示を行っている等)
- 既に弁明の機会付与通知を受けている場合
確約手続を活用すべきタイミング:
【最も効果的】
消費者庁から調査開始の通知を受けた段階
↓
すぐに確約手続を希望する旨を相談
↓
確約手続通知を受ける前に確約計画の骨子を準備
【やや遅い】
確約手続通知を受けてから準備開始
↓
60日以内に確約計画を作成(時間的に厳しい)
【手遅れ】
弁明の機会付与通知を受けた後
↓
確約手続は利用できない
かたぎり塾の事例から学ぶこと:
- 返金措置の重要性: 確約計画の認定を受けるには、被害回復措置(返金)が事実上必須
- 迅速な対応: 消費者庁からの通知を受けたら、速やかに確約手続を検討
- 外部専門家への相談: 確約計画の策定には弁護士等の専門家の助言が不可欠
3. 📊 [振り返り] 2025年の景品表示法違反措置命令総括
2025年の措置命令件数(1月〜12月):
月措置命令件数主な事例10月2件NOVA、テレビ新広島11月3件アイリスプラザ、ダイユーエイト、ツルハ12月0件-
2025年の特徴:
- 二重価格表示違反が多発: NOVA、ツルハなど、「通常価格」の販売実績がない事例が目立った
- ECサイト関連の違反増加: アイリスプラザ、ダイユーエイト、ツルハはいずれもECサイトでの違反
- システム管理不備が原因: ECモールのデフォルト設定、価格管理システムのメンテナンス不備など
- 大手企業でも違反: 企業規模は免責理由にならないことが明確に
確約手続の導入による影響:
2024年10月に確約手続が導入され、2025年2月に第1号認定が出ました。今後、事業者が違反被疑行為について、確約手続を積極的に活用するケースが増えると予想されます。
💡 今日の薬機法・景表法の学び – ワンポイント集
📌 学び1: 確約手続の戦略的活用 – 措置命令を回避する新しい選択肢
確約手続とは何か?
2024年10月1日に施行された景品表示法の確約手続は、違反被疑行為について事業者が自主的に是正計画を作成・申請し、消費者庁から認定を受けることで、措置命令と課徴金納付命令を回避できる制度です。
なぜ確約手続が導入されたのか?
従来、違反被疑行為の早期是正、再発防止策の実施、一般消費者への被害回復等を自主的・積極的に行う事業者がいる場合でも、これを評価するための制度はありませんでした。そのため、事業者が自主的に問題を解決するインセンティブを提供し、迅速な問題解決を促進するために確約手続が導入されました。
確約手続の具体的なメリット:
1. 措置命令を回避
通常ルート:
消費者庁の調査 → 措置命令 → 企業名公表(違反認定)
↓
レピュテーションの大幅低下
確約ルート:
消費者庁の調査 → 確約計画認定 → 企業名公表(違反認定ではないと付記)
↓
レピュテーションへの影響が比較的軽微
2. 課徴金を回避
通常ルート:
優良誤認・有利誤認 → 課徴金納付命令 → 売上額の3%を納付
確約ルート:
優良誤認・有利誤認 → 確約計画で返金措置 → 課徴金なし
3. 早期の信頼回復
通常ルート:
措置命令 → 報道による信頼失墜 → 長期的な信頼回復が必要
確約ルート:
確約計画認定 → 自主的な問題解決を評価 → 比較的早期の信頼回復
かたぎり塾の事例で具体的に理解する:
もしかたぎり塾が確約手続を利用せず、通常の措置命令ルートになっていたら:
【措置命令ルート】
① 消費者庁による調査
② 弁明の機会付与
③ 措置命令の発令
④ 企業名公表(「景品表示法違反」と明記)
⑤ 報道による大規模な信頼失墜
⑥ 課徴金納付命令のリスク(別途)
⑦ 長期的な経営への悪影響
しかし、確約手続を利用したことで:
【確約手続ルート】
① 消費者庁による調査
② 確約手続通知を受ける
③ 確約計画を作成・申請
④ 消費者庁が確約計画を認定
⑤ 企業名公表(「違反認定ではない」と付記)
⑥ 措置命令・課徴金を回避
⑦ 自主的な返金措置で顧客からの信頼回復
📌 学び2: 返金措置の重要性 – 確約計画認定の事実上の必須要件
確約計画の認定要件:
景品表示法では、確約計画の認定要件として以下の2点を定めています:
- 措置内容の十分性: 違反被疑行為およびその影響を是正するために十分なものであること
- 措置実施の確実性: 確実に実施されると見込まれるものであること
「措置内容の十分性」とは?
消費者庁の運用基準では、「少なくとも、類似事案の措置命令等で命じられているのと同等の措置を講ずる必要がある」と規定されています。
しかし、措置命令では返金措置は命じられません。それにもかかわらず、かたぎり塾の確約計画では返金措置が含まれています。これは何を意味するのでしょうか?
返金措置が事実上必須の理由:
消費者庁が確約手続を導入した背景には、「一般消費者への被害回復等」を促進する意図があります。そのため、確約計画の認定に際して、返金措置の有無が「重要な事情として考慮される」とされています。
【確約計画の構成】
必須要素(措置命令と同等):
- 違反被疑行為を再び行わない旨の決議
- 一般消費者への周知徹底
- 再発防止策の策定・実施
- 履行状況の報告
事実上必須要素(措置命令にはない):
- 返金措置(被害回復)
返金措置の具体的な内容:
かたぎり塾の事例では、「違反被疑行為の期間に入会した顧客に対し、入会金の一部を返金すること」とされています。
返金措置の設計において検討すべきポイント:
□ 返金対象期間: 違反被疑行為があった期間
□ 返金対象者: 当該期間に購入・契約した顧客
□ 返金額: 全額か一部か(過去の類似事案を参考)
□ 返金方法: 現金、銀行振込、電子マネー等
□ 返金の周知: 対象顧客への個別通知、Webサイトでの告知
□ 返金期限: 確約計画で定めた期限内に確実に実施
返金措置と課徴金の関係:
通常の措置命令ルートで課徴金納付命令を受けた場合、課徴金額は「売上額の3%」です。しかし、確約手続を利用して返金措置を実施した場合、課徴金自体が免除されます。
【課徴金額の比較】
売上額1億円の場合:
措置命令ルート: 1億円 × 3% = 300万円の課徴金
確約手続ルート: 課徴金なし(ただし返金措置を実施)
つまり、返金措置の金額が課徴金額(3%)を下回れば、確約手続の方が経済的に有利になる可能性があります。
📌 学び3: 確約手続の実務的な進め方 – 消費者庁との事前相談が鍵
確約手続を成功させる実務的なポイント:
1. 早期の相談が重要
消費者庁の運用基準では、「確約手続をより迅速に進める観点から、消費者庁が確約手続通知を行う前であっても、違反被疑行為に関して調査を受けている事業者は、いつでも、調査を受けている行為について、確約手続の対象となるかどうかを確認したり、確約手続を希望する旨を申し出るなどの相談を行うことができる」とされています。
【タイムライン】
理想的な対応:
調査開始通知を受ける
↓(即座に)
確約手続を希望する旨を消費者庁に相談
↓(並行して)
確約計画の骨子を準備
↓
確約手続通知を受ける
↓(60日以内)
確約計画を申請
↓
認定
現実的によくある対応:
調査開始通知を受ける
↓(様子見)
確約手続通知を受ける
↓(慌てて準備)
60日以内に確約計画を作成(時間が足りない)
↓
認定されない可能性
2. 確約計画の内容について消費者庁と事前協議
確約手続通知を受けてから60日以内に確約計画を作成・申請する必要があります。しかし、60日で十分な確約計画を作成することは困難な場合があります。
そのため、確約手続通知を受ける前に、消費者庁と確約計画の内容について事前に相談し、骨子を固めておくことが重要です。
3. 外部専門家(弁護士)への相談
確約計画の策定には、過去の類似事案の措置命令内容を踏まえる必要があります。また、返金措置の設計、再発防止策の内容など、専門的な知識が必要です。
そのため、弁護士等の外部専門家に相談し、確約計画の策定を支援してもらうことが望ましいです。
4. 確約計画の認定基準を理解する
確約計画が認定されるためには、以下の2つの要件を満たす必要があります:
□ 措置内容の十分性
- 過去の類似事案の措置命令と同等以上の措置
- 返金措置の実施(事実上必須)
- 実効性のある再発防止策
□ 措置実施の確実性
- 計画の履行が確実に見込まれること
- 具体的なスケジュールと責任者の明確化
- 必要な予算・人員の確保
📌 学び4: 確約手続vs措置命令 – どちらを選ぶべきか
確約手続を選ぶべきケース:
✅ 違反被疑行為があったことを認め、自主的に是正したい
✅ 顧客への返金措置を実施する用意がある
✅ レピュテーションへの影響を最小限に抑えたい
✅ 課徴金を回避したい
✅ 早期に信頼を回復したい
措置命令を受け入れるケース(争うケース):
✅ 違反していないと確信している
✅ 違反の事実について争う根拠がある
✅ 返金措置を実施したくない
✅ 措置命令を受けても経営への影響が限定的
判断のポイント:
- 違反の可能性: 違反している可能性が高い場合は、確約手続を積極的に検討
- 返金額の試算: 返金措置の総額と課徴金額(3%)を比較
- レピュテーションへの影響: 措置命令による信頼失墜vs確約手続による自主是正のイメージ
- 経営への影響: 措置命令が経営に与える長期的な影響を評価
実務的なアドバイス:
消費者庁から調査開始の通知を受けたら:
STEP1: 違反の可能性を客観的に評価(弁護士に相談)
STEP2: 違反の可能性が高い場合、確約手続の活用を検討
STEP3: 返金措置の総額を試算
STEP4: 確約手続のメリット・デメリットを評価
STEP5: 確約手続を希望する場合、速やかに消費者庁に相談
STEP6: 確約計画の骨子を準備(弁護士と協力)
STEP7: 確約手続通知を受けたら、60日以内に確約計画を申請
🔍 今週の総括
今週は新規の措置命令はありませんでしたが、2025年2月26日に景品表示法の確約手続の第1号認定事例が公表されたことが、今後の実務に大きな影響を与えます。
今週の重要ポイント:
- 確約手続第1号認定: かたぎり塾のケースは、確約手続の実務的な活用方法を示す重要な事例です
- 返金措置の重要性: 確約計画の認定を受けるには、被害回復措置(返金)が事実上必須です
- 早期相談が鍵: 消費者庁から調査開始の通知を受けたら、速やかに確約手続を希望する旨を相談することが重要です
- 新しい選択肢: 確約手続は、措置命令と課徴金を回避する新しい選択肢として、今後の実務で積極的に活用されるでしょう
事業者が取るべき行動:
- 自社の広告表示を総点検し、景品表示法違反のリスクがないか確認
- 万が一、消費者庁から調査開始の通知を受けた場合、確約手続の活用を検討
- 確約手続について弁護士等の外部専門家に事前に相談し、理解を深める
- 違反が発覚した場合の初動対応マニュアルを整備
業界全体への影響: 確約手続の第1号認定が出たことで、今後、違反被疑行為について確約手続を活用する事業者が増加すると予想されます。確約手続は、事業者が自主的に問題を解決し、顧客への被害回復を実施することで、措置命令と課徴金を回避できる画期的な制度です。今後の実務において、確約手続の活用が広がることが期待されます。
💡 次回更新: 12月16日(月)


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