再生医療|2026/8/14|羽田野 剛士

厚労省が再生医療で改善命令等を公表:クリニックが確認したい5つの実務ポイント

厚生労働省が2026年7月31日に公表した再生医療等安全性確保法に基づく改善命令等をもとに、医療機関が確認したい提供体制・患者適格性判断・疾病等報告・製造委託・記録管理のポイントを整理します。

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2026年7月31日、厚生労働省は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき、複数の再生医療等提供機関の管理者や特定細胞加工物等製造事業者に対する改善命令等を公表しました。

今回の発表は、単に「書類をそろえているか」という話ではありません。厚労省の公表資料では、再生医療の提供主体として医療機関が適切に判断していたか、健康被害に関する報告が行われていたか、製造・品質管理が適切だったかなど、実際の運用そのものが問題として示されています。

本稿では、公表資料で確認できる事実と、そこから医療機関が実務上確認しておきたいポイントを分けて整理します。

厚労省が公表した内容

厚生労働省は2026年7月31日、再生医療等安全性確保法に基づき、国内の医療機関管理者2名および特定細胞加工物等製造事業者1社に対して行政処分を行い、韓国の事業者に対して改善請求を行ったと公表しました。

公表資料によると、発端の一つは2026年3月、再生医療を受けた患者が投与中に急変し、その後死亡が確認された事案です。厚労省は緊急命令や立入検査を実施し、その後の調査で複数の法令違反を確認したとしています。死亡原因については、公表時点でも究明中とされています。

また、別の医療機関では、再生医療提供後に入院加療を要する事案が発生していたにもかかわらず、疾病等報告がなされていなかったことも公表資料に記載されています。

今回の事案で特に重要なポイント

厚労省資料から、医療機関側で特に確認したいのは次の5点です。

1. 医療機関自身が治療の可否と内容を判断しているか

公表資料では、第三者が作成した患者リスト等に基づき、患者の選定、投与日程、投与間隔、細胞数などが事実上決められ、医療機関側の主体性が乏しい提供体制が問題として示されています。

再生医療等を提供する医療機関は、外部事業者に業務の一部を委託していても、診療判断そのものまで外部任せにしない体制になっているかを確認する必要があります。

2. 患者の適格性判断が診療録に残っているか

厚労省資料では、患者の主訴や症状、提供計画上の選択基準・除外基準への該当性について、十分な記載がない診療録が存在したことが示されています。

実務では、「なぜこの患者にこの再生医療を提供すると判断したのか」を、後から第三者が確認できる形で記録できているかが重要です。

3. 健康被害・有害事象の報告フローが機能しているか

今回の調査では、入院加療を要する健康被害が発生していたにもかかわらず、疾病等報告が行われていなかった事案も確認されています。

院内で異常事象を把握した後、誰が確認し、誰が報告要否を判断し、どの手続きにつなげるのか。制度上求められる報告と院内フローが一致しているかは、改めて確認しておきたいポイントです。

4. 細胞加工の委託先に対して必要な指示・確認ができているか

公表資料では、医療機関が特定細胞加工物等の製造について、委託先に実効性のある必要な指示を行っていたとはいえない状況や、投与前に適切な製造が行われたかを十分確認していなかった状況が示されています。

契約書の有無だけではなく、実際の製造条件、品質管理、変更時の情報共有、受入時の確認など、運用として機能しているかを見る必要があります。

5. 外部事業者との関係が医療機関の主体性を損なっていないか

今回の公表資料では、第三者が施術費用、患者選定、治療計画、投与条件などに広く関与していた実態が記載されています。

外部パートナーを利用すること自体ではなく、その関係によって医療機関が本来行うべき医学的判断や管理責任まで実質的に外部へ移っていないかが重要です。

クリニックで一度確認しておきたいこと

今回の事案を踏まえ、再生医療等を提供している医療機関では、少なくとも以下を院内で確認しておく価値があります。

ここで挙げた項目は、今回の厚労省資料を踏まえた実務上の確認観点です。すべての医療機関に同一の対応を法的義務として求める趣旨ではありません。個別の提供計画や契約、法令上の取扱いについては、原典や専門家の確認が必要です。

HDNの視点:書類より「実際に誰が判断しているか」を見る

今回の公表で特に注目したいのは、形式的な書類の有無だけではなく、実際の治療現場で「誰が患者を選び、誰が治療内容を決め、誰が製造条件を確認しているのか」が問われている点です。

院内の運用を見直す際には、規程やSOPを増やすだけではなく、実際の患者導線・診療判断・委託先とのやり取りを時系列で並べてみると、責任の曖昧な部分を発見しやすくなります。

HDNでは、クリニックの業務フロー整理や患者導線、運用設計の支援を行っています。法的判断そのものが必要な場合は、医療法務に詳しい専門家と連携して確認することをおすすめします。

参考

関連情報

本稿は厚生労働省の公表資料をもとに、HDNが医療機関運営の観点から整理したものです。個別の法的判断、診療判断、再生医療等提供計画への適合性については、関係法令、所管当局、専門家等にご確認ください。